氷河はどんどん厚くなり、消耗域では融解量のほうが多いので、氷河はどんどん薄くなるはずである。
しかし安定した氷河では、氷河の形や厚さは年々ほとんど変わらない。
これは、涵養域でよけいにたまった分が、消耗域でよけいに融けた分をちょうど埋め合わせているからで、これが氷河の流動である。
しかし、氷(固体)である氷河がなぜ流れるかという問題は長い間、物理学者を悩ませた問題であった。
19世紀にアルプスの氷河を研究したフォーブスJ. Forbesは氷河が水飴(みずあめ)のように流れるという粘性説を発表し、一方、ティンダルJ. Tyndallは、氷河の流動を、ファラデーによって発見された復氷の理論によって説明した。
現在では、氷の結晶の塑性変形と、氷河の底面滑りが流動をもたらすと考えられている。
氷の結晶は融点近くにあるので、強く熱せられた金属が変形しやすいように力を受けると、塑性的に変形する。
氷の結晶はちょうどトランプのカードを積み重ねたような構造をもっているため、上から重力が加わると、カードが崩れていくように、結晶にずれが生じて変形するのである。
氷の塑性変形の研究は、レオロジーrheology(流水学)の発展に役だった。